「KIKOE」

監督・製作・編集・撮影・インタビュー 岩井主税
大友良英さんの1990年代から2007年までの様々な活動のドキュメンタリー。

大友さんの90年代初期の作品で、サンプリングマシンを使用したサウンドコラージュがあり、この映画はちょっとそういう感じ、と始まってすぐに思った。
大友さんという人、音楽、またはそれにまつわる様々なことに関して言及した多くの人の言葉。そして大友さんの音楽。それが時系列を飛ばし、細かく切り刻まれながらコラージュされている。
もしかしたらとても大切なことを語っているかもしれない断片。
もしかしたらその時は割とどうでも良いような発言のひとつだったかもしれない断片。
その断片だけで意味を成すもの、成さないもの。
それらを羅列していくことによって、この映画として新たな意味が付加されているシーン、付加されたような気がするシーン、それともやっぱり断片。
そして、大友さんとその時々のバンドでの音。様々な音。
音のシーンと誰かのインタビューのシーンがあって、時折わざと、インタビューのシーンの出だしを前のライブシーンの音が浸食してたり。ほんとちょっとじわじわと。なんかそれが生き物っぽい。音という波形の、見えないけれども形を持った生き物っぽい。

後ろ髪の長かった大友さん。いろんなバンドでのいろんな人。若かったりそうでなかったり。いや、実に楽しめる。90年代の頃のライブ映像は思わずニヤニヤしてしまう。
ある時期に、大友さんは時代ごとにどんだけいろんなことをやる人なんだと思ったこともあったけれども、数年前から、ようやく観客の私にも大友さんを貫く1本のふっとい柱の存在がわかりはじめる。や、わかったって言うか、私にもようやく少し、それがKikoeてきたって感じかな。

人の顔認識能力が乏しい私は、そのバンドやらポジションやら楽器やらで誰、と判断はついても、出てきただけでは全然わからないバカ者です。
GroundZeroでサックス吹いてる菊地成孔はすぐにわかるのに、その後ずーっと喋りで出てるのに、それは誰なのか全然わかってなかった。途中、話の内容ではっと気付く。菊地さんじゃん、と。大谷能生氏もねー、名前だけ知ってて顔は知らないので、映画見てる間はわかんなかったな。
ジョン・ゾーンが昔と今ではあんなに変わってて・・・と笑いながら言うTAKEDAに、「え、ジョン・ゾーン、わからんかった・・・」と私。
ずーっと出てる田中泯田中泯だとわかんなかったし。
写真では拝見してる飴屋さんもわかんなかったし。
「そうかー、あれがヤン・シュバイクマイエルだったのかー」とか。
いやー、いっぱい、知ってる人と知らない人とわかんなかった人がいて、みんなで答え合わせをしても楽しめる映画だわー。

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