「霜花店(サンファジョム)運命、その愛」

秋のことだったか、「ねえ、りりこさん、韓国の『サンファジョム』って映画、知ってる?」って言われて、内容を聞いてお互いに目をキラリンとさせて「行く、行きます、絶対に!」と言ってたんだ。
で、楽しみにしてたのですが、その「霜花店(サンファジョム)運命、その愛」というちょっとこってりした邦題を目にし、公開が近くなるにつれ、正直ちょっとテンションが下がってきたんだよなあー。
なんか、んー、これ、どうなんかなあーっと。
でも観てきましたよ、シルバー劇場にて。

この映画は大まかなところは史実を基にしているそうです。
内容は、14世紀後半、元の影響下にある高麗。
元の皇女を正室にしている王はゲイで、名家の子弟を集めて作られた近衛隊を置いている。その隊長ホンニムを寵愛している。
世継ぎ問題のため、皇妃との間に子供をもうけねばならないが、皇妃とセックス出来ない王。それで、寵愛するホンユンに皇妃を身ごもらせるよう命じる。それで・・・とゆー話です。

えっとですね、結構こってこてな展開でもあるけれども、私は良かったなあ。
私は、「受け取られなかったモノ」が出てくるシチュエーションにむっちゃ弱いの。ダメージ受けるんだわ。
例えば「ナビイの恋」のマッサージ椅子ね。
ナびおばあの初恋の男サンラーが60年ぶりに帰ってきた。サンラーとナビイはかつて引き裂かれてしまい、サンラーは島を追放されていたのである。その後ナビイはすでに結婚し、おじいとなった年下の夫と幸せに過ごしていたのだけど、初恋の男が忘れられない。おじいは大切な牛を売って腰の痛いナビイのためにマッサージ椅子を買ってくる。けど、ナビイは舟に乗ってサンラーと去っていくのだ。ああ、マッサージ椅子がー。牛を売ってまで買ったマッサージ椅子がー!
おじいはそれをナビイのために買った、ということその気持ちを伝えるだけでよしとしているようで、それを持ってしてどうにも引きとめようとか、去ったナビイを恨むわけではないのだけど、私にはあの絵面が悲しすぎて何度思い出しても泣いてしまう。

この映画も、王がホンニムのために名馬を買い、それを与えるために約束した場所で彼を待つのね。
王様なのに。
王様なのに、外で馬と共にずっと待ってる。すっかり、夜になってしまうまで、同じ姿勢でずっと待ってる。
あかんー! ありえんわー!!
てか、そういうシチュエーションにだだ泣きなんですけどー!

私は子供のときにそういう思いをしているようで、それは「受け取られることなく、待つ王」の側ではなく、そういう思いをさせてしまったあとで激しく後悔する側だと思う。具体的にこんな事件が、と思い出せないのだけども、そういう事態にとことん弱い。


ところで、子をなすために性交を命じられる家来と王妃が、その性交の快楽をきっかけにして国を成すための身分、関係、政治的策略などすべて引っくり返ってしまうという設定が「サンファジョム」ですけど、そこのところをよしながふみのマンガ「大奥」

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))

と比較して考えるとこれまた面白いです。大きく違うのは「女性」の捉え方。

この映画のタテが面白かったなあ。
香港映画のタテ、日本映画の立ち回りとも全然違うのね。
ワイヤー使って跳躍するのは香港映画的なんですけど、もう少しナチュラルで、斬るというより叩くような剣の使い方が日本のものとは全然違うのね。そういう部分も見所の一つです。