時折、うちの店でオフ会らしきものがあったりします。
ネットで出会った人たちが集まって、ごはんを食べながら親睦を深める、らしい。数年前だったらうちの店でのオフ会と言えば、香港映画や韓国映画のファンの人たちがメインだったりしたんですけど、最近はカフェ好き、みたいな人たちのオフ会がちらほら入る。
カフェ好き、なんだから食べることだーい好き!みたいな食いしん坊バンザイな人たちかと思いきや、なんかそうでもないような気がする。
食べているそのテーブルから、食の情熱や熱気が、まったく伝わってこないのね。
なんかお口に合わなかったのかなあ・・・と心配になる・・・。
と、そのオフ会とは別の、カウンターにいたカップルの男の子のほうが、彼女の食べてたタイカレーを一口食べて、「おおっ、うまいっ! わあー、うまいわこれっ!」とうまいを連発してて、どこかちょっとほっとする。

あとになって、気がついたんだ。
大抵、こういうオフ会での食事って、みんな美味しそうじゃないんだよな。だってみんな、初めて会う人同士で、緊張したり盛り上げようとしたり、自慢話をしたり自慢話を仕方なく聞いたり、次の会話の糸口を探したり、とにかくいろいろと忙しいんだもん。それでお店側から言わせてもらえば、なんつーか食べることに対するちょっとしたあれこれが気が利かない感じだし、食べることに対する集中力もないように思えるのです。

昨日だったかな、夜に若い男の子と女の子が来たの。私はその子に見覚えはなかったけど、どうやら女の子は前にうちに来たことがあるようで、今回は男の子を連れてきてくれたようです。
オーダー前から「ここ、おいしいんだよ」と言ってる声が聞こえました。
ご注文は「今日のごはん」。その日は、豚肉と茄子とピーマンの辛味噌炒め。なんつーか、ちょっと珍しいアジア料理とかこじゃれたカフェめしでもない、中華風の普通のメニューです。
でも、お出しすると、女の子は嬉しそうな顔で男の子を見て、「ね。なんか嬉しくなるでしょ?」と言ってくれた。
うん、ホントにね、普通の料理なんだよ。でも確かにね、油で素揚げした茄子の色は本当にきれいで、ピーマンも色鮮やかで、お皿にはトマトの赤、玉子の黄色、ブロッコリーの緑があって、そういうのをちゃんと見てくれると本当に嬉しくなる。
「ごはん、美味しいー」
という声が聞こえた。
うんうん、ごはん、おいしいよね。
食べ終わる頃、
「なんか実家で食べてるみたいやん? ちゃんとバランスよく食べなさいって言われてるみたいで」
と女の子が言ってて、私はじーんとした。
この子は本当に、ごはんも野菜もお肉も玉子も、みんな一つずつ美味しく食べてくれたんだな。最初から最後まで、食べるという行為を味わって、噛みしめて、食べてくれたんだな。
私は大事にしたいな、この子を。
こういう人の、時々のごはんでありたいよ、うちは。

食べるのって、一人でも誰かとでもいいけど、リラックスした状態で、怒りとか悲しみとか緊張に支配されずに、テレビ観てたり携帯見てたりもせず、少しだけ食べるということに集中しながら食べると、もっともっと美味しく食べられるんだなあ。