詩人・大江麻衣さん

お互いに川上未映子さんのファンということで知り合って、彼女が来ると大抵、未映子さんのあれは読んだかこれはどうかという話ばかりでした。ところが、川上未映子さんがユリイカ主催の「中原中也賞」を受賞した翌年、今度は大江麻衣さんが中也賞にノミネートされました。惜しくも受賞は逃したものの、その後、高橋源一郎氏のツイートで彼女は詩人として世界に産声を上げました。
詩人「大江麻衣」が世界に生まれるその瞬間に立ち会えたことは、私にとっても大きな喜びでした。
わからないことや知らないものが多すぎます。
料理の名前からそのものを思い起こすことが出来ません。映画の名前や音楽の名前のように、料理の名前を覚えるのにも、一定の能力がいるのだと思います。何度通っても、観たことのない映画と、聴いたことのない音楽が流れています。壁にも知らない人の名前。知らない国で買われた店内の雑貨。知らないもので満たされた空間に、知らない人たちがいて、私にはわからない話をしています。
食べず嫌いだったもののひとつに、茄子があります。料理に使われている食材は、名前すらわからないものが多いですが、茄子はわかります。なにか少しでも“わからない”に繋がりたくて、茄子を食べました。週替わりのカレーに入った茄子はやわらかくて、カレーの味がしました。茄子のことが少し、わかりました。でも、週替わりカレーがどんな食材で成り立っていて、それらがどういう過程を経て混ざり合ったあの状態になるのかは全くわからないままです。おいしいということは、よくわかります。
また、これはなんだろう、と思うために行くのだと思います。わからないもの沢山のマタハリの中、わたしと話してくださるりりこさんは、その世界のことをとてもよく知っているので、安心します。安心しながらおいしいごはんをいただきます。10周年おめでとうございます。