「落下の王国」が好きすぎる!

2年前に観逃がしたことをもっとも悔やんだ映画はターセム監督の「落下の王国」だった。
それを、今、DVDでようやく観た。

ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]

ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]

最初はDVDを店で流してて、だから仕事をしている私は最初から集中して観ていなくて、断片だけをちらりちらりと観ていた。しかも音声はない状態で。
話はわからない。物語の設定も。けれど、断片で目に入る映像は一つ一つが完璧な絵のようで、あんまり美しいものだからかえって笑えてくる。そしてこの映画のラストシーンが目に入った時、なにやらぐっと胸にこみ上げてきて、あれよあれよという間に眼球がパンパンになってきて目が充血して、そんで涙がぼたぼたっと落ちてきた。
なんだなんだ、なんでだ?
映像はモノクロで、昔の映画の細切れなシーンで、次々とあらゆるところから落ちたり転んだり危機一髪だったりする男の映像。
最後に高い崖から投げキッスをしながら落ちていく男。音声を切っているので誰によって発せられているのかもわからない字幕は、「ありがとう。どうもありがとう」。
どんなシチュエーションなのか全くわからないのに、いきなり泣けてきて困ってしまったんだ。
で、先週の休みにようやくちゃんと観て、ああもう本当にこの映画が好きになってしまった。
クリシュナ・レヴィによるこの映画の音楽を聴くだけで、もう泣けてしまう。ラストシーンは、あれから毎日、そこを観るだけでもう無条件に泣いてしまうのだから、仕事中は本当に困る。
ああ、好きだ。好き好き好きすぎる!
さっき、この映画のことを検索してて、そうしたら観た人のレビューなどがあって、それを読んでちょっと鼻で笑ってしまった。
美しいとかそれほど美しくないとかほほえましいとか希望がどうとか、や、人の感想を鼻で笑うなんてそれは大変に失礼なことであるのですけど、いかんせん私はもうこの映画が好きすぎるので、仕方がないのですよ。
じゃあどうなのか、そういうことじゃなくてどうなのかと聞かれると、8割ぐらいは言葉になるけどあとは説明できないナニモノかで、そういうことであるがゆえに無条件に好き好き好きすぎるということかしら。
8割、とか言っちゃって、考えてみたら何がこんなに好きなのかあんましちゃんと答えられないんだけど・・・。
映画の映画、が好き。すべては移ろっていくけど、そこにずっと焼き付けられていて、それを見さえすればその人に会える「映画」というものに対する映画が好き。
この美しい映画の画面の視点が好き。
色が、衣裳が、影が、いろんなモチーフが好き。
とても母性的な幼い少女の顔が好き。
美しい映像の中にある、奇妙に捩れた欲望が匂ってくるようで、そこが私のツボなのかもしれない。
そして、きっともっとよくわかんないところで、私はこの映画を偏愛しちゃってるんだろう。